ART FARMER / MODERN ART / UNITED ARTISTS GXC-3129
1958年録音
テナー・サックスはアートブレイキー・ジャズ・メッセンジャーズのメンバーであったベニー・ゴルゾン、ピアノはビル・エヴァンス、ベースは双子の弟であるアディソン・ファーマー、ドラムはデイブ・ベイリーという編成
ハード・バップの名盤とされ、よく名が挙がる作品ではあるが、超絶技巧でもなく、他人には真似できない癖があるわけでもなくと無難なトランペットを鳴らすファーマーであるが、普段から非常に真面目で几帳面な性格の人であると知った時は鋭く納得してしまったプレイヤーである。
ファーマーでなくビル・エヴァンスの演奏に注目して語る人も多い今作であるが、目立たずも卒なく律義な彼のトランペットこそ実は光り輝いている。
演奏全体の和を乱しもせず、小粋なユーモアも交えた外れた方もせず、きちっと自分の仕事を黙々と丁寧にこなす姿勢が、特に日本人に受けた理由を、音楽という枠を超え、日本固有の歴史的人種文化の土着性とが繋がるものなのかという深い驚きの因縁を感じざるをえないジャズではなかろうか。
アート・ファーマー参加のソニー・クラーク「Cool Struttin」もUS本国で受けず、日本で異様に受けた理由と重ならせずにいられないのである。