BRUCE SPRINGSTEEN / NEBRASKA / CBS/SONY 25AP 2440
1982年発表 スタジオアルバムでは6作目
セルフプロデュースで、自宅録音デモテープが主になっている。
ジャケットからして不穏なものを感じ取ってしまうだろうが、全米チャート1位を獲得した大ヒット「ザ・リバー」の前作から2年、アコースティックギターとハーモニカ、自身の声だけを武器にして、アメリカ人間社会の闇や不条理をテーマに内省的、社会的提議の強い自宅4トラックレコーディング作品を発表した。
このアルバム制作時にアメリカ南部文学のフラリー・オコナーに影響受けていた事は事実であったと後のインタビューで自身が語っているが、現実に起こった無差別殺人犯罪や冤罪などをテーマに歌の中で物語に変え、時として直視したくないような暗いリアリティを生身剝き出しのブルース・スプリングスティーンは、聴く者に突きつけて来ている。
ファンの間では、レコード全体を覆う暗く湿った作風を嫌う人も多いようだが、これは音楽を超えて「芸術」が持ち得るパワーだと思う。
ショーンペンが、今作収録の「ハイウェイ・パトロールマン」を題材に、映画「インディアン・ランナー」を作ったように、このような刺激的な創作は、また創作の多方面的放射性連鎖を生み出していくのだ。