CHICK COREA / PIANO IMPROVISATIONS VOL1 / POLYDOR MPF 1134
1971年4月 ノルウェー・オスロ録音
レーベルECM
プロデューサー、マンフレート・アイヒャー
フュージョンの到来を告げた「ビッチーズ・ブリュー」からのマイルス・デイビス・グループ、アンソニー・ブラクストンらとともにフリーインプロ前衛集団で活動した後に発表したピアノ・ソロアルバム。 今作がキッカケで、その後のジャズピアノ・ソロブームが始まったと言われている。
キャリアを見ていると、チックのピアノはジャズという枠組みに捉われる事の無い自由で創造性の高いピアノニストであるという印象を持つが、今作の冒頭曲「ヌーン・ソング」だけを聴いていても、今までの彼には見ることができなかった非常に内省的な静けさと零れ落ちるような脆く淡いタッチのピアノが聴ける。
インプロでありながら崩れる弱さも無く、1本の筋が通る丁寧に紡がれた繊細な絹糸のように上品で煌めくピアノである。聴き進めるうちに、ユーモアや匠の遊びさえ感じられ、自信に満ちた音が散りばめられる。
自己と見つめ合った彼は、その感情を持ってエネルギーを外に放出するため、次のレベルへ昇華するべく動き始める。
翌年、不朽の名作「リターン・トゥー・フォー・エヴァー」が産み落とされるのであった。