MAL WALDRON / ALL ALONE / GLOBE MJ-7114
1966年3月 ミラノ録音
ビリー・ホリデーの歌詞「I’m left alone,All alone」から触発されたと言われる、「レフト・アローン」の続編になる姉妹作品だが、全曲オリジナル、ピアノのみの初ソロである。
ジャケットスリーブからレコードを出して、ターンテーブルの上にその針が落ちた瞬間から、もう圧倒的に哀しいピアノが始まる。
全編、哀愁と郷愁漂うようなムードに包まれているのだが、荒れ狂う極寒の断崖絶壁の上に独り佇むマルの姿を思い描いてしまう。
「All alone」での親指トレモノ奏法により刻まれるリズムは、時としてドラムスであり、ビートを打ち鳴らしていく。
マルのソロピアノアルバムは、ピアノ1つだけの世界でなく、ドラムやサックスがあたかも存在しているかのように聴こえてしまうのは、マルの表現力豊かなピアノタッチと、才能ある作曲・構成センスの賜物である。ゆえに、自信を持ってこういう形でのリリースをしたのではなかろうか。
もともと共演者によって彼の魅力も引き出される事が多い様に思われているが、今作で彼自身だけの魅力が高いからこそ共演者も際立たせることができていた証明であろう。
マル・ウォルドロンという人間の丸裸な世界が淡々と拡がっている作品だ