MILES DAVIS / BITCHES BREW / COLUMBIA GP 26
1969年8月録音(us盤1970年3月リリース)
おそらくこのアルバムを解説しようとなると本1冊ぐらいは容易に書けるであろうジャズ史を超えて、世界中の音楽を塗り替え、まさに誰もがマイルスを意識した影響を与えまくった奇跡の名盤。
停滞していたジャズシーンと同時にそれを憂いつつも必死に抵抗しチャレンジし続けた葛藤のマイルスが編み出した電子ジャズ「フュージョン」の幕開けとともに、ロックや民族音楽、ポップスや歌謡、クラッシックまでもが化学変化を起こし、クロスオーヴァーミュージックの渦が世界を包む現象を引き起こさせたアルバムである。
当時のアメリカ=世界のミュージックビジネスの中心はロック一辺倒だった。ジャズも売上的に追い込まれたジャンルとなり、生活苦のために音楽活動を辞めたり、ヨーロッパに活動を移すジャズマンが多い中、マイルスは負ける事無くアメリカシーンで孤軍奮闘し続けていた。混沌とした音像の中でマイルスを輝かせるプロデューサー、テオ・マセロの仕事も大きい。
当然、売上的にも誰も文句の言いようがないロックミュージックをねじ伏せての大ヒット。
苦しい闇の中からこそ、稲光のようで強烈なアイデアと手法は生まれてくるのだという事を教えてくれる人生の生き(音)ざま