レコードの買取をしていると、名盤といわれる音楽作品によく出会います。私たちスタッフもレコード好き、音楽好きですから、その実物を手に持ったでけでもグッと胸が熱くなるような感動を覚えます。一枚のレコードが名盤という評価を受けるのはその音楽性や内容が優れているから。「音楽の教科書に載せて後世へと繋ぎたい」、そう思えるレコードが世の中にはいくつもあるのです。
そんな名盤の数々から、今回 筆者が取り上げるのはこんなアーティストによるこんな作品。ご自宅でこのタイトルが聴かれずに眠っているなら、とてももったいないことなんです。
文:福田俊一(Ecostore Records)
コモン『ライク・ウォーター・フォー・チョコレート』
Common / Like Water For Chocolate(MCA, 2000年発表)
シカゴが生んだリリシスト、コモンの代表作がこれ。彼にとって4枚目のアルバムとなったのが『ライク・ウォーター・フォー・チョコレート』。《MCA》という大手レーベルからのリリースとなり、発売初週で7万枚というセールスを記録しました。音楽制作面ではエグゼクティブプロデューサーをザ・ルーツのドラマー=クエストラヴ(?uestlove)が務め、R&Bシンガー・ディアンジェロやトランペット奏者ロイ・ハーグローヴのほか、ヒップホッププロデューサーであるJ・ディラなど豪華な面々によって結成されたグループ<ソウルクエリアンズ>が強力にバックアップ。収録曲ではボビー・コールドウェルの「オープン・ユア・アイズ」をサンプリングしたラヴソング「ザ・ライト」、トップクラスの実力を持つプロデューサー=DJプレミアのビートでラップする「ザ・シックス・センス」が人気です。ヒップホップ界屈指のストーリーテラー(物語の語り手)が展開するリリックはまるで一大絵巻物。発表から20年経ちましたが依然として評価が高く、これからも傑作として語り継がれてゆくであろう作品です。
アートワーク写真に映るのは、「COLORED ONLY(有色人種専用)」と書かれた水飲み器、そしてそれでのどを潤すアフリカ系アメリカ人の女性。これは1956年にアラバマ州で撮影された写真で、アフリカ系アメリカ人を取り巻く公民権運動および貧困問題に関連した報道写真で有名になった写真家ゴードン・パークスが撮ったもの。『ライク・ウォーター・フォー・チョコレート』というタイトルはメキシコの同名小説から取られたそうですが、ジャケットを見てわかる通り《アフリカ系アメリカ人にとっての水の如く》という意味合いも。本作では人種差別に対するメッセージ性を強く感じさせます。
ヒップホップのLPレコードが高騰中
1990年代〜2000年代にヒップホップの新譜レコードを買って聴いていた人もいるでしょう。当時こそクラブミュージック専門店では新譜のレコードが多く販売されていましたが、あれから20年以上経った今となってはヒップホップのレコードが珍しくなりました。ヒップホップのCDこそ今でも比較的入手しやすいのですが、レコードとなると当時多くは製造されなかったこともあり、手に入れるのが難しくなってきました。そのため、現在 中古レコード市場ではヒップホップのレコードの価格が高騰しており、10年ほど前の相場と比べても顕著に値上がりしたものが多い印象です。
もしヒップホップのレコードをお持ちであれば、エコストアレコードが強気な価格で買取します。ぜひ当店までご相談くださいませ。
筆者: 福田俊一(ふくだ・しゅんいち)
FTF株式会社 制作部/販売部兼務。買取部門のコラムやnoteのほか、販売部門の特集コラムを執筆。大学卒業後にレコード収集に興味を持ち、約15年かけてジャズレーベル、ブルーノートの(ほぼ)すべてのLPをオリジナルで揃えた。
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