中古レコード買取という側面からみると、90年代のジャズ作品にはある傾向が見受けられます。
それは、製造枚数であれレコードで発売された作品数であれ、数がそれ以前の時代よりも少ないということ。
80年代初期にCDが登場し、86年頃にそれまで音楽を楽しむ主なツールだったレコードとのシェア率が逆転。以降、レコードは多くの家庭から徐々に姿を消してゆく運命に。
そのため、CDではよく見かけるけれど、レコードとしては希少な作品がジャズにはあります。
中古レコードにとって、希少性はまさに高価買取となる大きな理由のひとつ。中古市場ではどんな作品が人気なのか、あなたは知ってみたくありませんか?
今回は、知っているようで知らない90年代ジャズのレコード作品についてご紹介します。
あの時のジャズ作品レコードは人気?
ジャズのレコード作品には、古いものも最近流行りのものも、ヴァリエーションも豊かに沢山の種類があります。
そんな中、90年代に発売されたレコードはどちらかと言うと数が少ないのが特徴。それ故に人気タイトルであれば高価買取されるものも。
ここで、まさにそんな時代に世に送り出されたジャズ作品のレコードをいくつか解説してみましょう。
Roy Hargrove / Diamond In The Rough(Novus, 型番:3082-1-N)
1990年発表。
ロイ・ハーグローヴは、1997年に『Habana』、2002年には『Directions in Music: Live at Massey Hall』で2度もグラミー賞に輝いたトランペット奏者。90年~2000年代を代表するジャズミュージシャンの一人です。
ソニー・ロリンズ、オスカー・ピーターソン、ハービー・ハンコック等、古くから活躍するジャズレジェンドとも多数共演を果たし、彼らからその才能を称賛されたことも。
一方、ハーグローブの多彩さはジャズ以外の音楽でも発揮されました。彼の名が冠され、自身がリーダーとなり結成されたRHファクター(The RH Factor)が2003年にリリースしたアルバム、『Hard Groove』はジャズの他、ファンク、ソウル、ヒップホップやゴスペルミュージックの要素を取り入れた人気作。当時この作品はLPレコードでも発売され、現在 人気が高まり中古市場で高額になっています。
本作はそんなハーグローブにとっての記念すべき初リーダー作。セロニアス・モンクの名曲「Ruby My Dear」や自身のオリジナル曲を収録。その後の彼の活躍を暗示するかのような、”ダイヤの原石”というタイトルも印象的。
2018年、彼は病気のため49歳という若さでこの世を去りましたが、彼が残したレコード作品はこれからもファンに高く評価されてゆきます。
Natalie Cole / Unforgettable With Love(Elektra, 型番:61049-1)
1991年発表。
ナタリー・コールはジャズピアニストであり偉大なるボーカリスト、ナット・キング・コールの娘。1975年のデビュー以来、R&Bとポップス歌手として多くのヒット作を残しました。
本作は、「L-O-V-E」や「Smile」等、父親が愛唱したジャズの名スタンダード曲を彼女がカバーした作品。そしてハイライトでもある「Unforgettable」では、亡き父ナット・キング・コールの唄声がオーバーダビングされ、親子二人は時空を超えてデュエットを披露。
同作は全米チャートで1位を獲得、同年のグラミー賞では最優秀アルバム賞に輝きました。当時としては異例の大ヒットを記録したジャズアルバムとなりました。
CDでは比較的多く出回っている作品ですが、レコードでは希少な存在のため中古市場では高額で取り引きされています。
Ronny Jordan / The Antidote(Island Records, 型番:ILPS 9988)
1992年発表。
ロニー・ジョーダンは1962年生まれ、英国ロンドン出身のジャズギタリスト。90年代に大流行したイギリスのクラブジャズシーンを盛り上げた一人。彼の音楽はジャズとヒップホップ、そしてR&Bが見事に調和しており、アーバンジャズと呼ばれました。
この作品では、クラブジャズに上手くアレンジされたマイルス・デイヴィスの大名曲「So What」を収録。当時ロンドンで旋風を巻き起こしていたアシッドジャズムーブメントが誇る傑作アルバムとなりました。
2019年にはMusic On Vinylというレーベルから限定盤の金色仕様のカラーレコード、そして180グラム重量盤仕様という2種類で再発されたのも記憶に新しい作品です。
Diana Krall / All For You (A Dedication To The Nat King Cole Trio)(Impulse!, 型番:ORG 006)
1996年発表、2009年レコード発売。
米ジャズレーベル、インパルスからリリースされたカナダ人女性ボーカリスト、ダイアナ・クラールの第3作目。ジャズ歌手、ナット・キング・コールへのトリビュート作品。
CDのリリースから遅れること13年、2009年に180グラム重量盤LP2枚組で初レコード化。さらに、2016年には45回転高音質LP2枚組仕様(型番:ORG 006-45)でも再発されました。
Cassandra Wilson / Traveling Miles(Blue Note, 型番:7243 8 54123 1 8)
1999年発表。
カサンドラ・ウィルソンは、1996年と2008年、グラミー賞を2度受賞した経歴を持つ90年代を代表するジャズシンガー。
75年にプロとして活動を開始した彼女は、93年にブルーノートと契約。デビュー作『Blue Light ‘Til Dawn』がヒットし、ジャズファンの間でその名が広く知れ渡りました。
こちらは彼女にとって13枚目となるアルバム。マイルス・デイヴィスが演奏した楽曲にスポットライトを当てたトリビュート集。
※写真は2014年に発売された再発盤。
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ここ数年、一度は影が薄くなったレコードに再び大きな注目が集まっているのをご存知ですか?
レコードが何処の家庭にもあった世代の方々がまた戻ってきているだけでなく、全く馴染みがなかった若い世代の方々も興味を持って今レコードを聴いています。
レコードは国境を越え、世代も超えて音楽を楽しめるまさにボーダーレスな音楽ツール。まず物として所有する嬉しさがあります。手入れしたり、片面が終わったらプレーヤーでひっくり返したりする手間もありますが、それもまた音楽を聴く喜びを直に感じるレコードの面白さ。その点がCDとはまた違う良さであり魅力でしょう。
いつの時代も、ジャズには聴くものを魅了する不思議な力があります。
チャーリー・パーカーがジャズクラブでアルトサックスを奏で観衆を虜にした50年代、ジョン・コルトレーンが『至上の愛』を吹き込んでジャズ史に大きな1ページを残した60年代、ハービー・ハンコックがヴォコーダーを駆使して大活躍していた70年代。しかし、決してそれだけではありません。
90年代もジャズには数多くの歴史が刻み込まれました。名盤と呼ばれる人気作品が揃っています。
レコードが誰にも聴かれず、ただ部屋の片隅にしまってあるだけなら、もったいないことだと思いませんか?その中に名盤レコードがあるかもしれません。
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文:福田俊一(Ecostore Records)