当店は中古レコードの買取専門店ですが、お客様のレコードを査定していると名盤によく出会います。お客様と同じように、私たちスタッフも音楽が大好き。作品の魅力を分かっているため、そういったレコードを手に持つだけでグッと胸にこみ上げてくる感情があります。音楽史にその名を刻む名盤はそういう気持ちにさせてくれるのです。
こんなレコード、あなたの部屋で眠っていませんか?
文:福田俊一(Ecostore Records)
モス・デフ『ブラック・オン・ボース・サイズ』
Mos Def / Black On Both Sides(Rawkus, 1999年発表)
ブルックリン出身のMC、モス・デフ。ラッパーとしての彼のキャリアは96年に3人組グループ、アーバン・サーモ・ダイナミクス(Urban Thermo Dynamics:UTD)を結成したことに始まります。その後、他のミュージシャンへの客演参加や自身の楽曲発表を重ね、98年には盟友タリブ・クウェリとのデュオ=ブラック・スターを結成。ニューヨークのアンダーグラウンド・レーベル《ロウカス》から同名作を発表するとファンから大きな人気を獲得しました。
そんなモス・デフが満を持してリリースしたファースト・ソロ作がこの『ブラック・オン・ボース・サイズ』。楽曲のプロデュースは、ダイアモンド・D(D.I.T.C.)、DJプレミア(ギャングスター)、サイコ・レス(ビートナッツ)、Mr. Khaliyl(ブッシュ・ベイビーズ)、アリ・シャヒード・ムハマド(ア・トライブ・コールド・クエスト)ら錚々たる面々が担当。また、ゲストにはバスタ・ライムズ、Qティップを迎えたほか、演奏ではなんとジャズ鍵盤奏者ウェルドン・アーヴィンも参加。豪華プロデュース陣が作ったドープなビートに、アーヴィンによるキーボード演奏の旨みが加わり全編最高の仕上がり。65年にシングル盤レコードでのみリリースされたアレサ・フランクリン「ワン・ステップ・ビヨンド」をうまくサンプリングした曲「ミス・ファット・ブーティ」、88-Keysによるタイトなドラミングのうえで響くメロウなループが印象的な「ラヴ」など良曲揃い。リリシストとしてヒップホップ界に今なおトップクラスに君臨するモス・デフによる名刺代わりのド級の1枚。本作は彼のファーストアルバムにして90~00年代東海岸を代表する名盤のひとつとして高い評価を得ています。
多彩な彼の活躍はライミング(ラップ)だけにとどまりません。同作以降、継続して自身のアルバムを制作するほか、他のミュージシャンの楽曲にも多数客演参加。加えて、91年に映画『ハード・ウェイ』に出演したのを皮切りに、幾度となく映画・テレビに出演。モス・デフはラッパーとしてだけでなく、俳優としても活躍しているアーティストなのです。
状態の良いヒップホップのレコード、高く売れるかも!
世界的な再ブームを受けて、いまレコードの買取相場が上がってきた音楽ジャンルがあります。そのうちのひとつがヒップホップ。90~00年代、新譜でヒップホップのレコードを購入して聴いた方も多いでしょう。DJをするひともいれば、純粋にプレーヤーで聴いて楽しむだけのひとも。そんなヒップホップ作品ですが、発売から20年以上経った現在、中古レコードは傷ついたり劣化しやすいため良好なコンディションを保つ個体も減りました。また、相場が上がったヒップホップとはいえ、状態不良であれば買取で値段は付きにくい傾向にあります。ただ、需要は高まっているため、お持ちのレコードがまだ状態が良ければ当時1,000円台~2,000円台で購入したものもアッと驚く金額で買取されるかもしれません。CDが主流な時代の音楽であるため、CDと比べてレコードは製造数も元々多くはありません。あなたの部屋でまだ眠っているなら売るには今が最高のタイミングです。
大切なヒップホップのレコード、エコストアレコードにお売りください。
筆者: 福田俊一(ふくだ・しゅんいち)
FTF株式会社 制作部/販売部兼務。買取部門のコラムやnoteのほか、販売部門の特集コラムを執筆。大学卒業後にレコード収集に興味を持ち、約15年かけてジャズレーベル、ブルーノートの(ほぼ)すべてのLPをオリジナルで揃えた。
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