ジャズの名盤を数多く生んだアメリカのレーベル、Atlantic(アトランティック)のオリジナル盤のレコードも当店では買取のご依頼をよくいただきます。
ジャズの歴史上でも、Atlanticが生んだ名盤は数え切れません。
「Giant Steps」や「My Favorite Things」も有名なJohn Coltraneのほか、Charles Mingus、Modern Jazz Quartet、Ornette Coleman、Roland Kirkなど、同レーベルに吹き込んだ名アーティストは多数います。
「ジャズにはあまり詳しくはないけれど、自分が所有しているAtlanticのレコードのプレス時期を知りたい!」というあなたに向けて、オリジナルかどうかを見極める極意をエコストアレコードが伝授してみたいと思います。
知っていますか?Atlanticというレーベルのこと
まず、Atlanticは一体どのようなレーベルなのでしょうか?
Atlanticは、トルコからの移民だったアーメット・アーティガンとユダヤ系アメリカ人のハーブ・エイブラムソンという2人によって1947年に米国で設立されました。
ジャズやR&B(リズム&ブルース)のレコードを制作・発表しはじめ、ソウルミュージックでも一躍人気レーベルに成長。60年代終わりにはそれまでのレーベルのイメージとは異なるロックのレコードも録音するようになりました。
系列レーベルにエイブラムソンが設立したATCO Records(アトコ)があります。
1967年には米国大手Warner Bros.-Seven Arts(ワーナー・ブラザース=セヴン・アーツ社)に買収されて傘下に入りました。
当時、米国では人種差別がどこにでも根強くあった悲しい時代でしたが、Atlanticは腕があるアフリカン・アメリカンのミュージシャンを積極的に起用するなど、音楽的にもいち音楽レーベルとしても同社が残したその功績は計り知れません。
Atlanticに作品を残した著名ジャズ・ミュージシャン
■John Coltrane(ジョン・コルトレーン)
■Charles Mingus(チャールズ・ミンガス)
■Ornette Coleman(オーネット・コールマン)
■Chris Connor(クリス・コナー)
■Modern Jazz Quartet(モダン・ジャズ・カルテット)
■Lee Konitz(リー・コニッツ)
■Roland Kirk(ローランド・カーク)
■Art Farmer(アート・ファーマー)
■Herbie Mann(ハービー・マン)
■Jack McDuff(ジャック・マクダフ)
など多数
Atlanticのラベル変遷を公開。あなたがお気に入りのその1枚、ラベルはどれですか?
あなたはレコードのラベルはどのようなものだと説明できますか?
実は、ラベルはレコードの”顔”ともいえる大切な部分なのです。
ラベルのデザインは、同じアメリカ盤であってもその長い時代の中で少しずつ変化してゆきます。
Atlanticも例外ではありません。
ここで、Atlanticのレコードが纏ったラベルの数々を、時代ごとに分けてわかりやすく見てみましょう。
1.黄色ラベル(~1955年頃)
Atlanticでの最初期のLPレコードである10インチは、黄色いラベルのデザインのものでした。
その後、発売されたフォーマットが12インチレコードに移行してからも、しばらくの間このラベルが踏襲されたとのことです。
2.黒ラベル / 緑ラベル(1955年頃~)
AtlanticのジャズのLPレコードにおいて2番目に古いラベルデザインは、モノラル盤が黒に銀色の文字のデザインのもの、そしてステレオ盤は明るい黄緑色に黒字のものとなります。
1955年ごろにリリースされた作品ものから、1960年ごろにリリースされたものまで続きます。
Modern Jazz Quartet / At Music Inn (型番:1247)
1956年発表作品。ミルト・ジャクソンが奏でるヴィブラフォンの、耳に優しく伝わってくるその美しい音の揺らぎに虜になるファンも我が国にも多くいます。ゲストに迎えたジミー・ジュフリーが演奏するクラリネットも素敵な1枚です。
3.ブルズアイラベル(1960年頃のわずかな期間)
黒ラベル/緑ラベルの時代が終わる間際のわずかな期間に、このブルズアイラベル(英:Bull’s-Eye label)というデザインが採用されています。ブルズアイとは、英語で”的(まと)の中心”という意味。
John Coltraneの1960年発表の大傑作『Giant Steps』は、モノ盤はさきほどの黒ラベルに深溝(DG)があるものがオリジナルと認識されています。しかし、ステレオ盤は緑ラベルのものが確認されていないため、このブルズアイラベルに深溝があるものがオリジナルとされています。
Ornette Coleman / The Shape Of Jazz To Come (型番:SD 1317)
1959年発表作品。ジャズの歴史にフリージャズと革命をもたらしたオーネット・コールマンのAtlanticでの第一作目。彼の他には、ドン・チェリー(tp)、チャーリー・ヘイデン(b)、ビリー・ヒギンス(ds)が参加しました。
この作品は、モノ盤もステレオ盤もどちらもこのブルズアイラベルがオリジナルとなります。
4.白ファン:赤紫ラベル / 青緑ラベル(1960年頃~)
1960年過ぎになるとラベルデザインはまた一新され、モノは上が赤で下が紫のラベル、ステレオは上が緑で下が青のラベルになります。
このラベルデザインで注目するポイントは、ラベル中心部の右側にある風車のようなマークです。
このマークが白いことからWhite Fan、日本では白ファンと呼ばれています。
5.黒ファン、Atlanticの文字が縦:赤紫ラベル / 青緑ラベル(1962年頃~)
1962年ごろになると、モノとステレオともにラベルの色は変わらないものの、右側の風車のようなマークが白から黒に変わります。
加えて、ATLANTICという文字がそのマークのすぐ横に、細く縦方向に記載されています。
ステレオも同様で、マークが黒に変わっています。
Brother Jack McDuff / A Change Is Gonna Come (型番:1463)
1966年リリース作。ジャック・マクダフが奏でるオルガンの音色もアーシーで魅力たっぷりな作品。マクダフのオルガンとジョージ・コールマンを含むホーンセクションが絡み合って発熱する様は、レコード盤をも溶かしてしまうのではないかと思うほどです。
タイトル曲は言わずと知れたサム・クックの名曲で、同じAtlanticの看板アーティストでもあったレイ・チャールズ59年に発表したWhat I’d Sayもカバー。
6.黒ファン、Atlanticの文字が横:赤紫ラベル / 青緑ラベル(1966年頃~)
1966年過ぎには、ラベル右側のデザインがさらに若干変更になり、ATLANTICという文字が横方向に記載されたロゴのラベルになります。1968年ごろまでこのラベルデザインは続きます。
このラベルデザインの時代までがモノとステレオの両方が同時期にリリースされていた最後の時代です。(このひとつ後の赤緑 / BROADWAYラベルの時代にもモノはあるが、プロモ盤に限りプレスされていた)
Roy Ayers / Virgo Vibes (型番:SD 1488)
1967年発表。ハービー・マンのバンドでキャリアを始めたのを皮切りに、70年代も数多くの名作を生み出したヴァイブラフォン奏者、ロイ・エアーズ。モダンジャズファンだけでなく、レアグルーヴやクラブミュージックファンからもその実力を認知されています。
ハービー・マンによるプロデュースのもと、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ジャック・ウィルソン(p)、チャールズ・トリバー(tp)らと録音した作品がこの1枚。
7.赤緑ラベル / BROADWAY(1968年頃~)
1968年ごろからラベルデザインは新しいものになります。
上が緑、下がオレンジ色で、下部にMFG. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 1841 BROADWAY, NEW YORK, N.Y.という記載があります。
そのことから、赤緑ラベル BROADWAYアドレスとして知られています。
8.赤緑ラベル / ROCKEFELLER(Wマークなし)(1973年頃~)
1973年ごろから、ラベル下部の記載がMFG. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 75 ROCKEFELLER PLAZA, N.Y., N.Y.と若干変わります。
9.赤緑ラベル / ROCKEFELLER(Wマークあり)(1975年頃~)
さらに、1975年ごろになるとラベル下部のMFG. BY ATLANTIC RECORDING CORP., 75 ROCKEFELLER PLAZA, N.Y., N.Y.という記載のあとに、【W】A WARNER COMMUNICATIONS COMPANYという文字が加わります。
ひとつ前のラベルデザインには無かった、ワーナー社の【W】というロゴがこの時代のラベルにはあるため、「Wあり」と呼ばれています。
オリジナルか否か、判断するポイントは何?
Atlanticはジャズ史において数々の名盤を世に送り出した名レーベルでもあるので、長い歴史のなかで何回もリプレス(再発)を繰り返しています。
一体いつの時代のレコードなのか、その1枚を鑑定する際に重要なポイントがあります。
それはレコードのラベルのデザインです。
ラベルを見ることである程度プレスされた時代を特定できるので、とても大切なカギになります。
当然、エコストアレコードの査定スタッフも、オリジナルかそうではないか、もしくはいつ頃製造されたものなのかをラベルを確認して鑑定しています。
そのレコード作品がリリースされた時に、Atlanticのどのラベルが使われていたかを知っておくことで、オリジナルかそうでないかを判断できるのです。
プロモ盤は当時の最初期のものなので、60年代以降のAtlanticの場合は白黒のデザインにこそなっていますが、どのラベルデザインがオリジナルなのかを知ることができます。
作品 一枚一枚のオリジナルの条件を知りたいのであれば、インターネットでプロモ盤のラベル画像を探して見てみるとよいでしょう。
□ジャケットにあるツヤツヤとしている光沢、コーティングとはどんなもの?
Atlanticのレコードには、ジャケットにコーティング加工(ラミネート加工)がされているものが沢山あります。
カタログの初期のもの、例えば50年代のアルバムにはコーティング加工のあるジャケットが多くあります。
しかし、60年代終わりになるとAtlanticのレコード作品からはジャケットにコーティング加工されているものが次第に無くなってゆきます。
当時の再発盤によっても、コーティングがあるものと無いものの2種類があるほどです。
【コーティングがあるもの】は、【コーティングがないもの】よりもより古い時代のものと認識されています。
ただし、オリジナル鑑定の側面から言うと、コーティングがあってもオリジナルではないものもあります。そのため、肝になるのはコーティングの有無よりも、やはりラベルデザインということになります。
※コーティングジャケットは、見た目にも重厚感があり豪華さがある
Atlanticのレコードを正しい値段で売りたいなら、ジャズの専門家もいるエコストアレコードへ
今回はAtlanticのオリジナル鑑定のカギとなるものをご紹介しました。
ジャズのレコードは60年以上も前のものなど、とても古いものも沢山あります。その60年以上の間で、複数回 リプレスされた作品ももちろん多くあります。
あなたが所有するそのレコードそのものの価値を最大限に理解するには、まずは製造された時代を特定することが大事になります。
オリジナル鑑定は簡単なことではなく、知識と経験、勘、そして何よりもジャズとレコードへの興味が必要になります。
当店にはジャズの知識も備えた査定スタッフが在籍しておりますので、あなたがお持ちのレコードの最大限の価値を見出すことをお約束できます。
レコードを手放そうと検討しているのであれば、ぜひ買取実績も豊富なエコストアレコードまでお気軽にご相談ください。
※本サイトに掲載されている記事の著作権はFTF株式会社に帰属します。投稿した記事のリライトの可能性が高い場合は顧問弁護士と協議の上、即日中に法的な処置を行いますのでご了承ください。