中古レコード買取専門店スタッフの私たちもお客様と同じく大の音楽好きです。商品の査定をしていると自分のお気に入り作品と出会うことも多々あります。レコードを手にとってまじまじと見つめること数十秒。レコード実物をプレーヤーで再生しなくともアタマのなかで流れてくるメロディ。「やっぱりいい音楽だなぁ」。そんなことを考えている間は自分自身のレコードでもないのに幸せな気分になるものです。
ここで、筆者を虜にしたヒップホップの名盤をご紹介。ヒップホップ好きの皆さん、こんなレコードはご自宅にありませんか?
文:福田俊一(Ecostore Records)
アシェル・アンド・ブルー・ブラック・オブ・ジ・アンスポークン・ハード『スーン・カム』
Asheru and Blue Black Of The Unspoken Heard / Soon Come…(Seven Heads, 2001年)
<The Unspoken Heard>はMCであるアシェル、MC兼プロデューサーのブルーブラックというワシントンDC出身の2人からなるユニット。90年代半ばからデュオで活動を開始し、アンダーグラウンドレーベル《Seven Heads》から本作「Soon Come…(2001年)」、そして「48 Months(2003年)」というアルバム2枚をリリースしました。デビューアルバムでもある本作の楽曲プロデュースに迎えたのは、ジャジーヒップホップを代表するユニットであるLone CatalystからJ. Rawls、Ge-ology、カリフォルニアのデュオ=The Sound Providers、DJ Khalil、88-Keysといった面々。収録曲ではジャズのヴィブラフォン奏者カル・ジェイダーの「モーニング」をうまくサンプリングした「Truly Unique」、ジャズギター奏者 ハワード・ロバーツ奏でる「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」をネタにした「This Is Me」など、随所にビート職人の巧さが光る優れたパフォーマンスを収録。2000年代初頭当時、トレンドでもあったモダンジャズをサンプリングすることで心地よく耳に馴染んでくるジャジーなビートが作品の全編を通じて堪能できます。
MCのアシェルは97年から故郷ワシントンD.C.の学校で教鞭をとっており、アートの指導によって後進育成に励む一方で<Educational Lyrics>という出版社も設立。ヒップホップの歌詞を読み解くことを通じて批評的な意見を持ち、文化の多様性を学生に伝える教材を制作しているそうです。彼の公式SNSアカウントには学校の教室で生徒とともに映った写真がいくつも投稿されていて、20年以上ものキャリアを持つベテラン教師としての側面も垣間見ることができます。そんな彼が卓越したライムミングスキルで繰り広げるストーリーテリングの世界。アングラ界の豪華プロデューサー陣の良質ビートも相まって、唯一無二、とてもハイセンスな楽曲を展開します。
ヒップホップの中古レコード、買取需要上昇中!
いま、ヒップホップの中古レコードの価値が世界的に見直されています。言うまでもなくヒップホップは現在でもメインストーリーにある音楽ジャンルのひとつですが、その黄金期といわれる90年代の作品でもその人気は衰えることはなく。当時のファンだけでなく、現在の若いファンからもその内容の良さから高い支持を得ています。変わらない人気、そして改めて高まる中古レコードの需要。その相乗効果によって、これまで比較的低いものが多かったヒップホップのレコードの価格が近年上昇しているのです。20年前、10数年前まで中古レコード店で数百円で販売されていたものがいまでは数千円になっているものも多くあるほど。もちろん、その恩恵はレコードの買取にも影響があります。ヒップホップのレコードの価格は主に海外で高まっており、それを見越した買取価格を提示できる業者では以前の数倍の金額で買取しています。もし処分を検討しているのであれば今こそ売り時でしょう。
大事なヒップホップのレコード、ぜひエコストアレコードに買取させてください。
筆者: 福田俊一(ふくだ・しゅんいち)
FTF株式会社 制作部/販売部兼務。買取部門のコラムやnoteのほか、販売部門の特集コラムを執筆。大学卒業後にレコード収集に興味を持ち、約15年かけてジャズレーベル、ブルーノートの(ほぼ)すべてのLPをオリジナルで揃えた。
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