ジャズのレコードの買取を調べているあなた。ネットに載っている難解な専門用語が分からず、お困りではありませんか?
プロのように詳しい方なら自然と覚える用語であっても、ただ好きで聴いている方にとってはもはや別言語。
「このようなレコードは高額で買取します」という情報が載った高価買取リストというものにも専門用語はやはり並びます。載っている言葉も初めて見るような用語ばかりで、意味が分からないこともあるのでは?
そこで、ジャズの中古レコードを売りたいあなたにプロも驚く知って得する専門用語を伝授しましょう。
文:福田俊一(Ecostore Records)
■モノラル盤、ステレオ盤
レコードの音楽作品においては「モノラル盤」と「ステレオ盤」の2種類があります。中にはその両方の仕様が発売されたものも。
しかしながら、そうは言っても年代によってはそもそもステレオ盤しか発売されていない作品もありますし、逆にモノラル盤しか発売されていない作品も。
MONOと表記されたモノラル盤のラベル
ジャズのレコードでは、1950年代終わり頃に発売された作品からステレオ盤が徐々に出始めました。それまで世界的にモノラルが主流でしたが、一般家庭でオーディオ機器がステレオに移り変わっていくのに合わせて、製造されるレコードも基本的にステレオ盤が主流となってゆきました。
STEREOと表記されたステレオ盤のラベル
そのため、より古い時代のものであるモノラル盤の方がステレオ盤よりも価値は高い傾向にあります。同じレコード作品においてステレオ盤とモノ盤の両方があるのであれば、モノ盤の方が値段は高く値付けされます。
買取においてもその特徴は同様です。やはり、両方あるならモノ盤レコードの方が高い金額での買取となることが多いようです。
■オリジナル、Original、First Pressing
レコードというのは、歴史上初めてプレスされたもの(製造されたもの)が最も大きな価値を持ちます。それはジャズのレコードでも同じです。
その最初期のレコードを専門用語では「オリジナル(英:original)」と呼びます。オリジナルか否かを鑑定するには、中古レコード店や買取専門店のスタッフのようにジャズのレコードに関する深い知識が必要。
オリジナル盤は探し求めるジャズ愛好家が多いため、人気も高く、中古レコード買取では高額になるものが多くあります。
■再発盤、リイシュー、Reissue
上記のオリジナルに対して、オリジナルでないもの、つまり後にプレスされたものを総じて「再発盤」または「リイシュー(reissue)」と呼びます。稀に復刻盤という言葉が使われることがありますが、復刻盤も再発ということになります。
殆どの場合、オリジナルに比べると再発盤は価値が下がるため、レコードの買取額も下がる傾向に。
それでも高い金額で買取される再発盤も中には存在します。
■セカンドプレス、2nd Press
中古レコードの専門用語には「セカンドプレス(2nd press)」という言葉があります。これは、日本語に訳すと”2回目のプレス”という意味。レコードコレクターの間では若干言葉のニュアンスが異なりますが再発盤のうちに入ります。
何に対しての2回目のプレスかというと、もちろんそれはオリジナルに対して。例えば、オリジナルは1965年にリリースされ、セカンドプレスは翌年1966年にプレスされた、というように使われます。ラベルやマトリックス等の変更点を基準にその2つの違いが判別されます。
セカンドプレスのレコードは販売額・買取額ともにオリジナルに次ぐ価格になることが多いようです。
ちなみに、セカンドプレスの更に後、3回目のプレスのことはサードプレス(3rd press)といいます。
■ラベル、レーベル、Label
ジャズのレコードで重要な意味を持つものが「ラベル」です。ジャケットの次にレコードの個性が現れるポイントだといえます。
ラベルとはレコード盤の中心にある紙製の丸い部分。
ジャズのレコードでこのラベルが大きな意味を持つ理由は、作品にもよりますが、時代によってそのデザインが遷移するから。
アメリカのジャズレーベルであるインパルスの作品をひとつ例に挙げてラベルについて解説してみましょう。
Max Roach / Percussion Bitter Sweet(Impulse!, AS-8)
1961年発表のこの作品では、こちらの画像にあるようにオレンジ色のラベルがオリジナルとなります。
こちらはオリジナルから数年遅れて1968年頃に発売された同じ作品のセカンドプレス。オリジナルではオレンジ色だったラベルデザインが赤黒のラベルに変わっているのが分かります。
先ほど解説したように、この2枚のレコードを買取するとなると上の画像にあるオレンジ色ラベルのオリジナルの方が高い値段で買取されます。
一見すると同じように見えるため、レコードに詳しくない方は気が付かないポイントかと思いますが、このようにラベルデザインひとつとってもオリジナル判別では重要な要素となるのです。
■深溝、Deep Groove、ディープ・グルーヴ、DG
1960年代頃までのジャズのレコードには、ラベル面に深い溝があるものがあります。これを「深溝(ふかみぞ)」、または「ディープ・グルーヴ(英:deep groove)」と呼びます。単に「溝」と呼ばれることもあります。
これはジャズに限りませんが、一般的にラベルに深溝があるものは古い時代のレコードです。深溝があるか無いかによっても、オリジナルかそうでないかが判断される重要なファクターになります。
中古レコード店ではラベルに深溝があるのものは「DG(deep grooveの略)」、もしくは「DGあり」と商品説明欄で表記されます。
また、時代やものによっては片面のみに深溝がある場合もあります。そのようなものは「片溝(かたみぞ)」と呼ばれ、「片DG」と表記されることがあります。
■プロモ盤、Promo盤、Promotional Copy
ジャズのレコードには「プロモ盤(英:Promotional Copy)」というものが存在します。プロモーションという名からも分かるように、プロモ盤とはレコード会社が宣伝を目的としてラジオ局などに配布した特別仕様のレコードです。
プロモ盤は最初期プレスであるオリジナルに多くみられ、ラベルは白黒印刷になっているなど、レギュラー盤(通常盤)とは異なるラベルデザインになっていることもあります。
プロモ盤は数も少ない、希少なレコードで高い価値を持ちます。それ故にレギュラー盤よりも高い金額での買取も期待できます。
■フラット盤、フラットエッジ、Flat edge、Flat rim
古いジャズのレコードを買い求める方は「フラット盤」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。
「フラット盤」とは、1950年代中頃まで製造されていた、盤のフチが平べったいレコードのこと。次の項目で解説するグルーヴガード盤はフチが盛り上がっているのに対し、フラット盤には盛り上がりはありません。
古い時代のレコードということもあり、手に持つとずしっと重みを感じ、分厚い盤が特徴。
「フラット盤」、或いは「フラットエッジ盤」と呼ばれ、英語では「Flat Edge」や「Flat Rim」といいます。
■グルーヴガード、Groove Guard、GG
「グルーヴガード」とは、レコード盤のフチにある盛り上がりのこと。
英語では「groove guard」と書きますが、略して「GG」と表記されることもあります。食べ物のピザで例えるならば”耳”の部分。フチのこの盛り上がりにより、レコード盤を重ねても盤面が擦れずキズを付けないようにするためににあると言われています。
フラット盤とグルーヴガード、盤のフチの構造もオリジナル鑑定の際にはその判別基準のひとつとして着目されます。
■耳マーク、Ear
ジャズのレコードを調べていると、「耳マーク」、「耳」といった言葉を目にします。何のことなのか全く理解出来ない方も多いはず。
これは主に50年代~60年代半ばにかけて、ブルーノートなど複数のジャズレーベルが製造(プレス)を依頼していた米国ニュージャージーにあったPlastyliteというレコード工場が実は関係しています。
このPlastylite社がプレスしたレコードには上の画像のように、人間の耳の形をしたような刻印が盤の内周部にあります。この刻印が通称 耳マーク(世界的には英語で Ear mark)と呼ばれており、厳密には耳ではなくPlastylite社の頭文字Pの筆記体の形を成しています。
耳マークの有無もまたオリジナルか否かの判断基準として重要になる要素です。
■ヴァン・ゲルダー刻印、RVG刻印、VAN GELDER刻印
ジャズのレコードでは、デッドワックス(内周部)にある刻印も重要。
その代表的なものが、アメリカ人録音技師 ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)がカッティングした証である通称「ヴァン・ゲルダー刻印」と呼ばれるもの。
彼が使用した刻印にはいくつか種類があり、最初期のものが「手書きRVG刻印」、次に「RVG機械刻印」、更にその次に「VAN GELDER刻印」という順で時代ごとに移り変わってゆきます。
彼はブルーノートやプレスティッジ、インパルス、サヴォイ等、多くのレーベルでの録音に携わり、そのレコードの内側に彼の名が刻まれました。その優れた彼の感性とエンジニアとして優秀な技術は今もなお高く評価されています。
手書きRVG刻印(~1957年頃まで使用
RVG機械刻印(1958年頃から1961年頃まで使用)
VAN GELDER刻印(1962年頃から使用)
■額縁ジャケット、Frame cover
「額縁ジャケット」とは、ジャケットの一辺、もしくは二辺のみが内側で重なっていて盛り上がっている構造のもの。言葉の意味としては、日本語でガクブチとあるように、まるで絵画を壁に飾る額縁のように、そのフレーム部分に似ているから。
1950年代中頃までに製造されたブルーノート、プレスティッジ、コンテンポラリーなどレーベルのレコードに見られる特殊なものでごく限られた年代のみにあるもの。
1950年代終わり頃に製造されたレコードから次第に消えていったものなので、盤のラベル部分同様、ジャズのレコードのオリジナル鑑定に用いられる判断材料となります。熱心な海外のコレクターの間でも、そのまま日本語で「Gakubuchi Frame Cover」と言っても通じるほど世界的にその言葉が浸透しつつあります。
■コーティングカバー、Laminated sleeve
1950年代以降のジャズのレコードにはカバーがツヤツヤしたラミネート加工されたものが多くあります。
このラミネート加工があるカバーを「コーティングカバー(英:laminated sleeve)」、或いは「コーティングジャケット」といいます。
このコーティングはアメリカのレコードだけでなく、イギリス、フランス、ドイツのものにもあります。手に持つと重厚感があり、見た目にもリッチな豪華さがあります。
専門用語はジャズの古いレコードを知る近道
今回はジャズのレコードを説明する際によく使われるやや難しめな専門用語をご紹介しました。
レコードを売ろうとお考えの方にはそのような言葉の意味を教えてくれる人もなかなか無いはず。
エコストアレコードは、長い年月の中で大勢のお客様から貴重なジャズの中古レコードを買取してまいりました。
当店へお売りいただければ、あるで暗号のような専門用語も知っておく必要は全くありません。経験も知識も豊富な査定スタッフがあなたのレコードを丁寧に鑑定するからです。
気楽に売りたい方、信頼できる中古レコード買取業者に任せたい方、レコード買取で損をしたくない方。そんな方にはエコストアレコードへお売りいただくことをお勧めします。
買取についてご不明な点等ございましたら受付までお気軽にお問い合わせください。
お客様からの買取のご依頼、ご質問をスタッフ一同心よりお待ちしております。
筆者: 福田俊一(ふくだ・しゅんいち)
FTF株式会社 制作部/販売部兼務。買取部門のコラムやnoteのほか、販売部門の特集コラムを執筆。大学卒業後にレコード収集に興味を持ち、約15年かけてジャズレーベル、ブルーノートの(ほぼ)すべてのLPをオリジナルで揃えた。