レコードのお手入れ、クリーニング、拭き方、メンテナンスと言っても、十人十色、実際には人それぞれのやり方があるものです。「これが正解!」というものはおそらく無いはず。水で濡らしたクロスで拭いたり、静電気除去の効果があるスプレーを盤面に吹き付けて拭いたり、バキューム式のクリーニング機材を使うこともあるほか、メガネ屋の店先にあることでもお馴染みの超音波洗浄機にはなんとレコード用のものまであります。
つまり、レコードのケアの仕方は複数あるということです。ここで、レコードを綺麗にする方法と、注意すべき点を伝授します。
文:福田俊一(Ecostore Records)
レコードを拭くのなら丸く拭きましょう
レコードには音溝があります。溝は円を描くように盤の表面に刻まれています。布やクロス、もしくはティッシュなどで拭く際に、丸く“溝に沿って”やさしく拭くようにするのがポイントです。拭きたい汚れが一か所であるときも溝に沿うように撫でて拭くように心がけるようにしてください。拭く向きは、溝に対して横方向であればどちら向きでも問題ありません。
今度は逆に注意すべき点についてです。それは、盤から見たときに外側から内側に向けて縦方向に拭くのは避けるようにしてください。溝とは違う方向に拭いてしまうと比較的簡単に盤スレ、最悪の場合キズができてしまうからです。小さな指紋が付いてしまったからといって、ちょっと縦方向に柔らかいティッシュで撫でるだけですらスレができてしまうことがあるので気をつけてください。
拭くときは水で濡らすと良い
乾いた布でささっとレコードを拭いてしまうことはありませんか?それではレコードをケアするどころか傷つけてしまうことすらあります。レコードの表面の汚れを落とそうと布やクロス、ティッシュを使うときは水で一度少し湿らせてから拭くようにしましょう。あらかじめ水で濡らしておけば、ほんの少し力をいれて拭くくらいであれば傷も付けることなく盤のお手入れができます。盤面のカビも汚れも落とせるので一番ラクチンな水拭きがお勧めです。
注意!スプレー式クリーナーの気を付けるべきポイント
レコードのクリーナーには缶のスプレー式があります。これは静電気を防止しホコリを付着しにくくさせることができる商品で、有名なオーディオメーカーが製造販売した商品もあり、数十年前からレコード愛好会のあいだでは親しまれています。このタイプのクリーナーというのはスプレーを盤に吹きかけて使用します。
スプレー式クリーナーでレコードをメンテナンスするときに注意すべき点、それはレコードの盤面が完全に乾いた状態になってから内袋にしまうようにすることです。
スプレーがレコードの表面に乾いていないままビニールの内袋へ入れてそのまま長い時間収納してしまうと、内袋と盤がスプレーでくっついてしまい、盤面に魚のうろこのような跡が残ってしまったり盤面に光沢が無くなり曇ってしまったりすることがあります。
この状態をビニ焼け・塩化ビニール焼け(塩ビ焼け)といいます。
この現象が起きてしまうといくら手間と時間を掛けたとしても元通りにはなりません。当然、将来的にレコード専門店で査定してもらうときにもマイナス評価となり買取不可とされる場合もあります。スプレーでキレイにした後はしっかりと拭き取って乾かしてからしまうようにしてください。
ビニ焼けしてしまったレコードの盤面
クリーニングしたレコードを高く売るためのコツとは?
レコードをより高価で売るための大切なコツがあります。それは、「レコードの本当の価値を分かっている信頼のおける店」を見極めて選ぶということ。新品の商品とは異なり、中古レコードには個々それぞれに違った価値があります。保存状態によって価値が変わるのは当たり前ですが、製造された国や時期によっても価値もガラリと変わるのです。後世まで語り継がれる名作には価値の高い貴重なレコードが多くありますが、買取において最も重要なカギを握るのは”歴史の中で埋もれた隠れた人気作品”をその業者が知っているか否か、ということです。
つまり、沢山あるレコードのうち名作は高く買い取るのに対して他はそうでもないのか、もしくは名作だけでなく隠れた名作にも高い査定額を提示できるか。仮に10枚、もしくは100枚を売るとしましょう。名作だけ高く買い取る業者と、名作以外にも隠れた人気作品をも高く買い取りしている業者、この2つでは査定金額の合計には非常に大きな価格差が生じます。それほど知識と経験がある業者を選ぶことが大切になるのです。
「レコードの買取なんてどうせどこも同じでしょ?」と適当に業者を選んでしまい、実際には数万円の価値があるレコードを、知識がない業者に数百円で売ってしまったらやはり悲しいことですよね。
所有するレコード1枚を売ることができるのはたった一度きりですから、慎重に選ぶべきなのです。レコードの売却では、間違った買取業者を選んでしまうと結果的に損してしまうことも起こり得るのです。そのためにも、その業者を利用した客の感想をホームページで見て参考にして、店の買取サービスが充実しているか、または店員の対応が丁寧かどうか、よく比較して検討することをお勧めします。
まとめ
レコードにとっての敵は傷だけではなくホコリや指紋などの汚れもあります。傷つけないように扱うことも大切ですが、汚れをキレイにすることもまた大切です。あなたの手元にある古い中古レコードは以前の所有者が大事にしていたからこそ。いつか買取してもらうこと、売ることも考えて今聞いているレコードから針を上げたらささっとで構わないので優しく汚れてを拭いてみませんか?
あなたをいつでも心躍らし癒してくれる音楽が刻まれたレコード。愛情をこめて綺麗にしてあげて感謝の気持ちを伝えたらレコードもきっと喜ぶと思いますよ。
筆者: 福田俊一(ふくだ・しゅんいち)
FTF株式会社 制作部/販売部兼務。買取部門のコラムやnoteのほか、販売部門の特集コラムを執筆。大学卒業後にレコード収集に興味を持ち、約15年かけてジャズレーベル、ブルーノートの(ほぼ)すべてのLPをオリジナルで揃えた。
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